26 2024-11

2025年の崖とは?経済産業省のレポートをもとにDXや社内の管理システムへの課題・対策を解説

2025年の崖とは何か?

2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した『「デジタルトランスフォーメーション」~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」にて発表した、企業が抱えるデジタルシステムの劣化や、経営戦略との乖離からくる危機を指しています。

具体的には、事業部や子会社ごとに構築された既存システムの影響で全社的なデータ活用ができなかったり、いざ経営陣がDX戦略を推進しても複雑化されたシステムの影響で効率的な企業活動・IT人材の疲弊・離職を招いてしまうことが大きな観点になります。企業・ホールディングス単位での活動のみならず、日本経済そのものに影響を与えかねない大きな事象の1つとして注目されています。

経済産業省が懸念する背景

経産省が提示したレポートで最も懸念されているポイントは、「2025年の崖」に関するリスクが企業の存続に影響を及ぼす可能性があるという点です。また老朽化したシステムが残存することによる経済損失は最大で12兆円とも言われています。特に、情報を活用した経営が重視される現在、過去のシステムへの依存は企業の柔軟性を損なう要因となります。

また、企業がデジタル化を進めるための投資が必要ですが、適切な投資が行われなければ、技術的負債が蓄積され、結果として競争力の低下につながります。経済産業省の調査によると、これらのリスクが放置されると、大きな経済損失が発生する可能性があると指摘されています。したがって、早急な対策が求められる状況となっています。

2025年の崖の現状課題

2025年の崖に関連する現状の課題の中には解消されているものも存在します。例えば、多くの大手企業を中心に「DX人材」が重宝されるようになり、大規模な基幹システムの改築などが行われるようになりました。一方で、いまだにレガシーシステムの課題に苦しんだり、人材の確保、そもそもシステム利用の継続が難しく今までの企業活動に支障をきたす会社も出てきているのも事実です。

レガシーシステムの問題点

レガシーシステムとは1980年代を中心に、メインフレームやそれを小型化したオフコン(オフィスコンピューター)と呼ばれるコンピューターを使ったシステムのことを指します。

大きな問題点としては、メインフレームや当時の開発技術に精通していた技術者が高齢化しているため、システム自体の修繕・改築が行えないことが挙げられます。日々進歩する技術革新の中で、当時のシステム構築を再度実現することは難しく、メンテナンスにかかるコストが増大していく点も企業活動においては課題点になりかねません。新しい技術やビジネスモデルに対応することが難しくなり、ビジネスの俊敏性が損なわれる恐れがあります。

さらに、レガシーシステムによって引き起こされるシステムの重要事項のブラックボックス化は、業務の透明性を低下させ、問題発生時の原因究明やトラブルシューティングを複雑にします。結果として、システムの不具合が増えることで業務に支障をきたすことがあるため、企業戦略全体に負の影響を与える要因となります。

IT人材不足およびシステム維持の課題

IT人材不足は、現在の企業運営における主要な課題の一つです。特にシステムの維持や運営に関する専門知識を持つエンジニアやコンサル人材が不足しているため、既存のシステムを適切に管理できない状況が多く見受けられます。このような人材不足は、企業が求める技術革新の遅れや、新しいプロジェクトの進行を妨げる要因となります。

上記のレガシーシステムの問題にも関わってきますが、ITスキルを持った優秀な人材がレガシーシステムの保守・運用にリソースや工数を割かれるため、貴重なIT人材の浪費にもつながっています。また、人材難である状況からレガシーシステムの保守・運用が俗人的になり、最終的には継承不可になるケースも考えられます。そのような場合はシステムの再構築を行うことになり、現代のDX推進にとっては望ましい観点ではありますが、膨大なコストがかかることも事実です。

DX推進における課題への対策

システムの刷新、IT人材の確保などの課題が浮き彫りになっているDX推進において、しばしば障害となるのが企業文化や既存の業務プロセスです。これらを解決するためには、柔軟な考え方と新しい環境への適応しつつ、社員の意識改革を通じて企業全体でDXに向けた姿勢に変えていくことも不可欠です。

経営層の意識改革

まず何よりも率先して行うべき事項は経営層の意識改革になります。具体的には、デジタル技術の重要性を理解し、戦略的な視点から具体的なビジョンを提示する必要があります。このビジョンが企業全体に共有されることで、社員一人ひとりの意識も向上し、従業員の自発的な取り組みが促されます。

データの「見える化」による指標の定義、技術的負債の度合い、データ活用のしやすさ、既存システム刷新のための体制やプロセスの整理など、高度なIT・DXスキルを持った人材と共に、社内のDX推進に向けて中長期的に達成していく指標や組織づくりを決断しなければなりません。

そのためには、経営者が自らの知識を深め、最新の技術動向や競争環境を把握することが大切です。経営層が積極的に情報を収集し、現状の壁を1つ1つ突破して、変化に対応する姿勢を示すことで、現場の従業員にもポジティブな影響を与えることになります。

企業間の関係性

現代の日本のシステム開発における環境は、製造業などのシステムを「使う」ユーザ企業とシステムを「開発する」ベンダー企業で役割が大きく分かれていました。ユーザ企業は、開発をベンダー企業に丸投げすることで、その責任もベンダー企業が負うケースが多かったです。

それが故に、要件定義が曖昧になったり、契約上のトラブルも多く発生していました。現在では、アジャイル開発なども増えてきて、ユーザ企業とベンダー企業の在り方も変わりつつあります。

ITシステムの刷新

経産省の報告書が最初に提出されてから6年ほどが経ってますが、新型コロナウイルスの影響で世間にもリモートワーク・オンラインMTGなどの新しい働き方が定着しつつあります(2024年11月現在)。その余波は、企業システムの活用にも変化が現れるようになりました。

例えば、ERPなどの基幹システムを動かすために、会社のローカル環境にあるパソコンを動かすべく、わざわざ出社をする従業員の方も多かったと思います。クラウド型管理システムの台頭に伴い、社内のシステムを入れ替える会社も増えてきました。また2023年にはインボイス制度の改定もあり、経理精算システムを中心に見直す風潮が高まってきました。

今までのオンプレミス型に比べてクラウド型は初期費用や開発コストも安く抑えることができます。既存の社内システムや他のツールとの連携に課題もありますが、現在では多くの企業でクラウド型が用いられています。

DXを担うIT人材の育成と確保

DXを推進するためには、IT業界に精通する人材の育成と確保が非常に大切です。企業にとって専門知識を持つ人材は、デジタル戦略の実行における中心的な存在となります。そのため、リーダーシップのある人材を育てるためのプログラムやプロジェクトを立ち上げることが求められます。

また、他社との連携を通じて人材を確保する手法も考えられます。業界内でのネットワークを構築し、必要なスキルを持った人材を共同で育成することで、より効果的に人材不足の課題に対処できるでしょう。このように、IT人材の育成と確保に向けた戦略は、企業のDX推進において欠かせない要素です。経済産業省や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が推進する「ITスキル標準」「情報処理技術者試験」などのDXに関する素養に求められるスキルを持つ人材を確保するのも1つの手段です。

最新技術の取り入れ方

最新技術を取り入れるためには、会社全体での戦略的なアプローチが不可欠です。まず、自社の業務ニーズと関連性の高い技術を選定する必要があります。単なるシステム開発の要件だけではなく、今後の企業成長を見越して、AIや機械学習、IoTなど、自社にとって最も価値のある技術を見極めることが重要です。

また、最新技術の実装には十分な準備と研修が求められます。従業員が新しいツールやシステムを効果的に活用できるよう、具体的なトレーニングプログラムを設けることが成功の鍵となります。これにより、業務効率の向上や顧客満足度の改善を図ることができます。

まとめ:2025年の崖に向けた企業の準備

2025年の崖を乗り越えるためには、企業が早期にさまざまな準備を整えることが一番の解決策になります。特に、デジタル化の進展に応じたシステムの近代化や、人材育成の強化が求められています。また、企業内部だけでなく、他社との連携を強化することで、技術や情報を共有し、共に成長していくアプローチも重要です。

次に、経営層の意識改革が鍵となります。経営者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性を理解し、戦略的な方向性を示すことで、社員の意識も変わり、全社的なプロジェクトへの参加意欲が向上します。さらに、レガシーシステムの問題に対処するため、必要な投資を行い、業務効率を向上させるための取り組みが求められます。

要約するとこれらの準備を進めることで、企業はデジタル競争において優位性を保ち、持続的な成長を遂げることが可能となります。変化の激しい環境においては、柔軟な対応力と迅速な実行力が必要です。さまざまな課題に直面する中でも、企業が積極的に学び、変革していく姿勢が求められています。

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